「金融機関を背景にした投資詐欺」
ゆうちょ銀行主任による犯行<2009.6.26.毎日新聞他>
ゆうちょ銀行元行員の男が客から金をだまし取った事件で、愛知県警捜査2課と千種署は26日、名古屋市中区松原、元同銀行千種店渉外部主任、宮崎教夫容疑者(55)を詐欺容疑で逮捕した。県警によると、宮崎容疑者は在職中の03~09年、架空の債券購入などの名目で客8人から集めた計1億1830万円を流用した疑いがあり、裏付けを急ぐ。
みずほ銀「調査役」12億円詐欺<2009.06.11livedoor他>
警視庁捜査2課に6日までに逮捕されたのは元みずほ銀行本店事務推進部調査役の野邑貞男容疑者(52)。
直接の逮捕容疑は、台東区の会社社長に「資金運用部が行う米国債の資産運用がある」などと持ちかけ、1800万円をだまし取ったというもの。他にも被害者は20人以上いて、詐欺の総額は12億円に膨れ上がるとみられている。
「同行に資金運用部は実在しない。しかし、野邑は部長印を作って、信用させていたのです。そのほか、頭取の偽造印、資金運用の提案書も偽造した。犯行がバレないように『(秘)運用なので、銀行では(問い合わせても)答えられない』というただし書きまで付けていました」(捜査事情通)
金融機関が背景にある安心感が被害拡大。
金融機関が行うというフレコミは判断力を鈍らせる。
上記のニュース事例では、金融機関が背景にあり、投資の話によって金銭を集めたという詐欺の特徴的な事例です。金融機関が背景にあるということは、詐欺師の立場によっても理解ができます。
「ゆうちょ銀」の場合は、外務主任であって、相応の責任のある立場です。
「みずほ銀」の場合は、調査役という役職ですが、「事務推進部総括チームの調査役」という立場であり、同行行員も被害者であるとされています。この被害者はニュースによれば、部長の決済印などを見て信じた模様です。
例えば、我々は警察官の制服姿を見れば、警察官であるという信頼を寄せます。病院で白衣を着た男性を見れば、医師だと思いますし、警備員が道路の誘導を行っていれば、その指示に従います。
こうしたパーソナルを信じるという機能は、社会生活を送る上で、誰もが当然に信じる心理の一部です。
金融機関は特に信用されます。企業としても特別であるし、信じていなければ、大事なお金を誰も預けません。そして、こうした預貯金が運用されていることは、一般社会人であれば、誰もが知っています。
詐欺師は何をすればお金を出すか知っている。
ニュースでの「ゆうちょ銀」の場合、多くは「国債」の特別勧誘であったとされています。
つまり、半分国営のイメージがある「ゆうちょ銀」が国家が発行する「国債」を買わないかと勧めてきたわけです。
そして、その勧誘員は詐欺を目的としていますが、本物のゆうちょ銀の行員であって、外回りをしています。ですから、騙された多くの被害者は、この詐欺師を顔見知りです。
例えば、国債が元本割れするということは誰もが考え辛いし、そもそも、そうした金融商品が低利であるが最も安定している事は、誰もが信頼するところです。ですから、この詐欺は、計画的に誰もがお金を出しやすい名目と自らの立場を利用したと言えるのです。
投資に潜む詐欺はどこにでもあるのです
例えば、あなたが懇意にしている銀行の融資係がいるとします。その融資係が、あなたに金融機関が行うリスクの少ない投資話を持ってきたとします。あなたが融資を受けていて、相応の余裕があるとします。例えば、ちょっとした安全な投資なら100万円ぐらい出せると思っているとします。
この段階で、この投資話を断われる人は、事実なかなかいないはずです。
「イヤイヤ、誰かに確認するから早々引っ掛らないよ。」と思うかもしれませんが、たいていの場合、「この投資はあまり勧めていないので、私の顧客様にしか教えていないのです。それに、行員でも本社の運用とつながっている人しかこれはできないので、できれば、ご内密にしていただけますか?」と言われ、スケベ根性が少し、でてしまうものです。
「あれ?あの投資どうなったかな・・・?」と思って問い合わせると、行員は既に退職し、同様の問い合わせが殺到しているのです。
気がついたときには、騙されていた、それが詐欺です。
避けようがない事例の一種です。
敢て確認できるとすれば、「証書」や「契約書」「約款」等の書面と、振込先の名義です。
例えば、金融機関の投資であれば、金融機関に振り込むか金融機関発行の受託証明書などが発行されます。
これは、例外なく当然なのです。
もしもこうした書類がないようなら、疑ってよいでしょう。また、振込先がどのような理由であっても、個人名義や他社名名義であるはずはありません。
この場合も同様、疑って構いません。
ところが、振込でなく現金での受け渡しの場合、書類を偽造されてしまっていれば、見抜く事は困難です。ですから、相手の立場も然ることながら、避けようがない詐欺の一種であると考えられます。
金融機関が背景の詐欺の場合の被害金救済
企業のコンプライアンスの問題もありますが、事実事件が起こってしまった場合、その詐欺を行った加害者が「事実営業の関連した活動」を利用して「第三者にはその金融機関の事業であると信じられる」場合は、民法715条使用者責任があると考えられ、金融機関を直接訴える事ができます。
使用者責任は、近年、多くの被害側が勝訴判決を得ている責任で、この使用者責任が認められると、金融機関に被害金の補償を求める事ができるのです。
ですから、被害に遭った場合は諦めず、証拠を集め、適切な弁護士さんに民事訴訟を提訴してもらう事が賢明な方法でしょう。