支払督促
支払督促は、債権者の申立てで裁判所が請求する理由があると判断する場合、支払いの督促を発行する手続です。債務者は2週間以内に異議申し立てをしないと、債権者の申立てで支払督促に仮執行宣言を付さなければならないので、債務者が異議申し立てをしない場合は、強制執行ができるようになります。
支払督促の詳細説明
支払督促とは、賃金などの金銭債権を相手が支払わない場合に、訴訟の手続を行わずに裁判所から相手に対して支払いを命じる支払督促を送達することのできる制度です。
支払督促は債権者が申立てをすれば、その主張から請求が妥当であると認められた場合、証拠調べ等の作業をせずに行えます。この支払督促に対して相手側が2週間以内に異議を申立てなければ、債権者の申立てにより裁判所は仮執行宣言が付され、これにも2週間以内に異議申立がない場合には、確定判決を得たと同等の効力を得ることができ、強制執行が可能となります。
支払督促を行うには、金銭や有価証券の支払を請求する目的であること、相手の所在地を管轄する簡易裁判所で申立てをすること、相手の所在が判明していること等が条件になります。なので、相手の所在が不明な場合に行う公示送達ができません。
ただし、仮執行宣言付支払督促の送達に関しては公示送達が可能となっています。また、債務者が複数存在する場合は、各債務者が所在するそれぞれの管轄の簡易裁判所に申立てなければなりません。
管轄の裁判所については例外があり、債務者が事務所や営業所を所有している場合、督促の内容が事務所又は営業所の業務に関するものである場合には、その所在地を管轄する裁判所に申立てることができます。さらに、手形や小切手による金銭の支払請求や、それに関する請求についても、その支払地を管轄する裁判所に申立をすることができます。
支払督促の効力は、債務者に送達された時から発生します。支払督促が送達不能となり、2ヶ月以内に再送達先を申し出なければ、支払督促の申立てを取り下げたものとみなされてしまいます。
さらに、送達後2週間が経過し相手が異議申立を行わなわず、債権者が仮執行宣言付支払送達の申立てが可能になったにもかかわらず、30日以内に申立てを行わなかった場合には、支払督促の効力は失われてしまいます。
請求の内容に違法性や間違いが無く、契約書等の債権の確かな証拠となるものを持っている、又は、相手との間に債務の存在や金額等に争いが無いが支払が遅れている等の、相手に異議申立をされる可能性が少ない場合に、支払督促の申立てが有効であると考えられます。
逆に、債務者が金銭を借りた覚えが無い、金額が違うなどといっている場合では債権者が異議を申立てる可能性が極めて高く、支払督促手続をせずに通常訴訟の手続を行う方が良いと考えられるため、このような場合は支払督促の申立ては有効ではありません。
また、相手に異議申立をされ、通常訴訟に移行した場合は相手の所在地を管轄する裁判所で訴訟が行われることになるので、相手の所在地が遠方の場合、その場所に赴く手間や費用がかかってしまうので、申立ての際に考慮する必要があります。督促の金額等に異議がなくとも、支払方法を一括から分割に変更する等の理由で異議申立を行う場合があるので注意が必要です。
支払督促を受けた場合、異議申立の機会は、支払督促を送達されてから2週間以内と、その後送達されてくる仮執行宣言付支払督促から2週間以内の2回あります。ただし、仮執行宣言付支払督促が送達された段階で異議申立を行った場合には、強制執行を止めることはできません。
強制執行を止めるためには、支払督促の異議申立と合わせて執行停止の申立てを行う必要があります。
支払督促の条件
金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引渡しを求める場合のみ
相手の住所を管轄する簡易裁判所で行う
簡易裁判所の書記官に申し立てる
つまり、債権が確定する書面などがあり、相手の住所を正確に知らないとできません。
支払督促申立の必要書類等
・支払督促申立書(入手先:裁判所)
・当事者目録
・請求の趣旨及び原因
・資格証明書(当事者が法人である場合に限ります。入手先:法務局)
・申立手数料(請求金額によって異なります。)
・郵送切手
・送達結果通知用郵便はがき
仮執行宣言付支払督促申立の必要書類等
・仮執行宣言申立書(入手先:裁判所)
・当事者目録(支払督促申立時に提出したもの)
・請求の趣旨及び原因(支払督促申立時に提出したもの)
・郵送切手
・送達結果通知用郵便はがき
・送達証明書(入手先:裁判所)
注意点
異議申してに理由は要らないので、異議申し立てをされた場合、通常訴訟を提起しなければなりません。ただし、支払督促にかかった費用は通常裁判に引き継げます。
支払督促申立の流れ
支払督促申立書と添付資料を相手の住所地を管轄する簡易裁判所に提出する。
支払督促が相手に送達される。
相手から異議申立がない場合は、仮執行宣言付支払督促の申立を行う。
仮執行宣言付支払督促が相手に送達される。
相手から異議申立がない場合は、支払督促が確定し、強制執行が可能となる。
メリット
・手数料(裁判などを行う印紙代)が裁判の半額である。
・手数料を裁判となった場合に引き継げる。
・裁判ほどの審査は無いので、裁判に比べると簡易である。
デメリット
相手の住所地を正確に知らないとできない。
借用書などの書面を持っていないと受理されない事が多い。
詳しくは裁判所HP
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui/minzi/minzi_04_02_13.html