取得時効
時効とは、一定の期間が経過することによって、権利や法律関係を得る又は失う制度です。時効の効力はその起算日にさかのぼります。時効には民事では消滅時効と取得時効、刑事では公訴時効があります。
取得時効とは、一定期間他人の物や財産権等を継続して占有していた場合に、他人の所有権を占有していた者が取得できる制度です。
取得時効には、所有権の取得時効と所有権以外の財産権の取得時効があります。
所有権の取得時効の要件には、所有の意思をもって、奪い取ったり隠して所有することなく平穏且つ公然に占有し、他人の物であることを知らずに、知らない事にも過失がない善意無過失な場合には、取得時効の完成期間は10年となります。もし、他人の物であることを知った上で、もしくは、知らなかった事に対して過失がある悪意有過失の場合には、取得時効の完成期間は20年となります。
所有権以外の財産権の取得時効には、地上権や永小作権、不動産賃借権等があります。所有権以外の財産権の取得時効の要件には、自己のためにする意思をもって、財産権を善意無過失で継続して行使した場合には、取得時効の完成期間は10年となります。
もし、悪意有過失で他人の財産権を行使した場合には、取得時効の完成期間は20年となります。
占有開始時に善意無過失であり、その後他人の物であることを知った場合でも、時効完成期間が10年間から20年間に伸びることはなく、10年間のまま変わりません。
取得時効を成立させるには、時効の完成と時効の援用が必要になります。時効の完成とは前述の期間が経過することで満たされます。
時効の援用とは、時効の完成後に、他人の権利を占有していた者等の利益を受ける者が、もともとの権利者に対して占有してきた権利を自分の物であると主張することです。この2つの要件を満たすことで取得時効は成立します。
また、時効の援用時に今まで占有してきた権利を放棄することも可能で、これを時効の利益の放棄といいます。時効の利益の放棄は、時効完成前にはできません。
占有期間の10年又は20年が経過する前に、占有ができなくなった場合を時効の中断といいます。
もともとの権利者から請求があった場合や権利を占有している者が承認した場合、権利を占有している者が占有を中止した場合等があった時に時効は中断します。時効が中断してしまうと、時効は完成しません。しかし、時効が中断した後、その中断事由が解消された場合には、その時点から新たに所得時効の完成期間が進行します。
時効の援用手続は、法律上規定があるわけではありません。しかし、口頭や通常の手紙等でのやり取りでは、後々言われていない、受け取っていない等トラブルになる可能性があるので、内容証明郵便を送るのが有効です。
もともとの権利者が占有者に直接個人的に請求した場合、時効期間が6ヶ月間停止されます。その間に裁判所で訴訟などの請求して認められると時効は中断されます。この場合にも、後にトラブルにならないように内容証明郵便で請求することが有効です。ただし、直接の請求では一時的に時効期間が停止するだけであり、6ヶ月が過ぎると時効期間が再開されてしまいます。
また、時効の停止は1回限りで、6ヶ月後に再度期間を延長することはできません。
所有権の取得時効の要件と期間
・所有の意思を持つ
・平穏且つ公然に占有する
・善意無過失である場合は10年間
・悪意有過失である場合は20年間
所有権以外の財産権の取得時効の要件と期間
・自己のためにする意思を持つ
・平穏且つ公然に行使する
・善意無過失である場合は10年間
・悪意有過失である場合は20年間